大学の9月入学のギャップタームと大学の狙いについて
東京大学は9月入学を検討していることを発表、他の大学もいくつかは追随することを発表しています。多くの外国の学校が9月入学であるため、日本も国際基準に合わせたほうが優秀な留学生を獲得出来るし、また日本から海外の大学院や博士課程に行くのにも都合がいいというのが大きな理由のようです。何事も国際化が進む中で、国際基準に合致するというのは優位性であるのは間違いない。以下は東京大学の発表した報告書である。
http://www.u-tokyo.ac.jp/gen02/pdf/20120126interim.report.pdf
(私は詳しく読んだわけではありません。もしかすると報告書の内容と一致していないことを書いているかもしれません。)
その反面、いくつもの不利な点も指摘されている。その一つがいわゆるギャップ・タームというものである。3月に卒業した高校生が、9月まで何をするのかということである。東京大学はこの時間を使って学習をしたり読書をしたり留学をしたりインターンをしたりすればよい肯定的な時間だという。上記報告書によると、
1 知的冒険をする(研究活動の参加、読書、留学など)
2 社会体験を通じて視野を広げる(ボランティア、インターン、ホームステイなど)
3 大学での学びにむけた基礎をつくる(高校時代の授業の復讐、体力作りなど)
しかしそんなに事は簡単ではないのではないか。1では遺跡発掘やら読書などを大学は提案しているが、ようするに自分で勝手に何かやれということを強要している。海外の語学学校へ行って語学を学ぶには確かに良い時間であるように見える。だが3-4カ月を海外の語学学校で過ごすには、授業料や交通費や滞在費を含めてすぐに100万円くらいの出費にはなってしまう。高校卒業直後にそんな大金を用意できる人がいったい生徒のどのくらいの割合でいるだろうか。私にはそれが多数派だとは思えない。もっとも民間の斡旋業者には特需となるだろう。
2では、例えばボランティアならば本気で探せば日本全国大概はどこでも出来るだろう。それでもその間には生活費はいるのだ。最初から授業を受けたほうが時間を有効に使えるという生徒もいるだろう。3に関しては生徒に暇つぶしのやり方の提案をしているようにしか聞こえない。
9月入学の間に好きなことができるという主張には、実は多くの生徒にとっては犠牲を強いられているだけに過ぎなくなる可能性がある。それに対して大学側が自分の主張を通すための言い訳をしているように思える。何かをやる時間を与えましたと言っているが、生徒にしてみれば無理やり与えられたのである。生活費を稼ぐためのアルバイトをするにしても中途半端である。雇用主から見れば、どうせ秋には学校が始まればすぐに引っ越しをして辞めてしまう人を採用したいと思うだろう
か。大学所在地と家が同じ人ならばまだいいが、そうでない人には不利であり簡単に都合の良いアルバイトが見つかるとも思えない。
また4月の一斉就職が主流の日本において、卒業後も時間が空くのは生徒にとって不利である。一斉に採用して一斉に研修をしていくから企業にとっては新卒採用の費用の削減や連帯感を生むという利益があるが、企業は改めて採用や研修をするとなれば負担となる。企業にとって不利ならば、それは生徒にとっても不利となる可能性が高い。どうしても先に採用される4月入学側が優位性を持ちそうだ。
それならば大学に限らず、小中高と全て一斉に9月入学にしてしまえばいい。それならばそのような問題は起きなくなる。また企業側も9月入社になればよい。ギャップタームは存在しなくなる。
だがもっと良い解決法もある。それは日本の大学がもっと自由であればよい。アメリカの大学と比較した場合、日本の大学は大変に融通が利かないのだという事実がある。例えば日本では授業といえば通年制であり、1年掛かりで履修して単位を取るというものが殆どである。週に一度授業があり、それを1年間通って授業を終了する。その間に大学を離れることや新たに途中から入学は出来ないし、そうすれば単位は取れない。
しかしアメリカは違う。多くの大学が学期制かクォーター制を採用している。これは例えば学期制ならば、一学期(通常は9月入学ならば12月までの4カ月程度)で単位を取る。その代わりに週に3回程度授業に出るのである。クォーター制ならばさらに短く、その代わりにさらに授業は集中する。さらに夏休みの1か月ほどに毎日のように授業を集中的に受けて単位を取るようなサマースクールもある。実はアメリカでは、1月からでもいつでも入学ができるのである。アメリカは要するに生徒は9月入学と必ずしも決まっているわけではなく、、9月でも1月でもあるいは夏休みからでも学期ごとにいつでも大学に入学出来て授業を履修することが出来るし、学期が終わればいつでも大学を休学して留学することもできれば、卒業時期も自分で決める事ができる。
それをせずに生徒だけに負担を与えるにも関わらず、生徒に時間の有効利用ができると主張する日本の9月入学制度には、学校側の怠慢があるように見える。大学にしてみれば優秀な外国人留学生を引き付けることが出来るとしても、それは本当は生徒に負担を与えることをわかっているのではないのか。大学も少なくとも積極的に生徒に学習の指針を示したりボランティアの紹介をする必要があるだろうし、アメリカ並みに出来れば学期制の授業の導入を出来るだけ早くに考慮するべきであると考える。そしてこうした動きが出てきている以上、社会もそれに合わせて義務教育の開始時期の変更や採用時期の柔軟化といった形で答える必要があると思われる。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (1)




最近のコメント