ホンダF1撤退
ホンダが急遽F1から撤退することを決定しました。来期2009年も参戦することを前提に動いていただけに、この突然のニュースは驚きをもってむかえれられています。実際ホンダ社長の「9月までの販売状況なら撤退はなかった」発言からも、この決定は最近急に下されたものだとわかります。
2000年に再参戦するときには記者会見で「その気になれば全て勝つことも可能なんだ」というような大口をたたいていましたが、実際には殆どの時期に低迷を続け、最終的には一勝をかろうじて上げただけでした。年間400-500億円といわれる予算を使っても弱小のプライベートチームにすら後塵をはいし、わざわざ世界に恥をさらしているだけということもあったでしょう。
F1などの国際的レースで好成績をあげることは、凄まじい宣伝効果になります。実際にホンダは、レースに勝つことによってその知名度とブランド力を世界に知らしめてきました。しかしこのままでは、負けたままでの撤退という、モータースポーツで数々の栄光を勝ち取ってきたホンダにとっては実に不名誉な結果になります。またドライバーのジェンソン・バトンをはじめ、チーム・スタッフらと来期の契約をしたものを一方的に解約するわけですから、ホンダという会社の信頼に対しても大きな傷を残します。しかも巨大企業に成長したホンダにとって、400億円という予算は必ずしも大きなものではないように見えます。ニュースによると、今期の営業利益は前期比42%減っても猶5500億円もあるのです。
しかし今期後半からの売上の急減はやはり厳しい。実際ホンダは今期前半までは好調に売上・利益を伸ばしていました。前期比42%急減した利益の原因は、今期後半の急激な経済の悪化によるものです。来期は通年でさらに悪化する経済を考えると、ホンダは赤字になる可能性が十分にあります。もし赤字か黒字になるぎりぎりの攻防になったとき、この500億円は実に大きい。たとえ来期のよりひどい経済の中で奮闘して何とか100億円や200億円の利益が出ていたとしても、F1が500億円使っていたら赤字転落です。F1をやっていたから赤字になったとなれば、経営陣に対して格好の攻撃材料を与えることにもなります。これはそれを避けるために先手を打ったというところでしょうか。
世界失速 ホンダ魂のむ 高コスト重荷、F1撤退
12月6日8時31分配信 フジサンケイ ビジネスアイ
金融危機による世界的な景気悪化はホンダの「DNA」をも飲み込んだ。ホンダは5日、自動車レースの最高峰であるF1世界選手権から今年限りで撤退する と発表した。F1関連費用は年間500億円以上に上るとみられ、技術者らも国内外で1000人以上を投じていたが、「将来への投資など経営資源の再配分が 必要」(福井威夫社長)と、“聖域”にメスを入れた形だ。ホンダの決断はF1に参戦する他の自動車メーカーやスポンサー企業の経営判断にも影響を与えそう だ。
≪時代の変わり目≫
「今後はこの激動の時代を生き抜き、レースで培われたチャレンジング・スピリットをもって…」。F1撤退を発表した冒頭、福井社長は目を潤ませ、声を震 わせた。創業者・本田宗一郎氏の強い意向で初参戦してから40年以上。1980年代に黄金時代を築き、世界中でホンダのブランド力向上に貢献した原動力だ けに、苦渋の決断だったことは想像に難くない。
今回、ホンダを決断させたのは「世界経済の加速度的な減速」(福井社長)だ。ホンダをはじめとする各メーカーが“ドル箱”にしていた米国市場は金融危機 以降、壊滅的なダメージを受け、今期の市場規模は前期より300万台近くも減って1300万台前半まで落ち込む見通しで、2009年度はさらに落ち込むと みられる。ホンダは二輪車や汎用エンジンも減速し、今期の営業利益は前期比42%減の5500億円まで減るほか、すでに国内外の工場で減産や人員削減に踏 み切っていた。
F1レースを取り巻く環境は年々厳しさを増す。マシンの高機能化で開発費は増加の一途をたどり、「周回タイムを1秒短縮するのに100億円かかる」(関 係者)という表現も大げさではなくなった。ホンダも開発費やチーム維持費などの関連費用が「数年前まで年100億円あればOKだった」(福井社長)のはも はや過去の話だ。
さらに、メーカーを苦しめたのが05年に欧州連合(EU)がたばこに関する広告の規制を強化したことだ。一時は「キャメル」「JPS」「マイルドセブン」など大半のマシンに掲示されていた広告は減少。今シーズンは全マシンからたばこ広告が姿を消した。
大スポンサーを失ったF1チームの多くは、蘭保険大手のINGやスイス大手銀行のクレディ・スイスといった金融機関、米通信大手のAT&Tや携帯電話の 英ボーダフォンといった通信系など、当時上り調子だった企業に救いを求めた。だが、金融危機は容赦なくこうした企業を襲った。INGやクレディ・スイスは 巨額の赤字を計上し、今後も視界不良だ。INGはひとまずスポンサーの継続を表明しているが、景気悪化に歯止めがかかることが必須条件だ。
≪迫られる経営判断≫
また、F1に参戦する自動車メーカーも難しい経営判断を迫られている。毎年のように撤退観測が浮上するのが02年の参戦以来、思わしい結果を出せないト ヨタ自動車。だが、ホンダのF1撤退を受けてトヨタはこの日、「初優勝に向かって活動しており現時点では撤退する予定はない」と表明した。
F1は「走る実験室」と呼ばれ、市販車開発にかかわる技術の蓄積・還元に役立つとされてきた。だが、最高時速が300キロを超え、今や“走るコンピュー ター”と化したF1マシンは市販車とあまりにかけ離れている。販売促進策としてもコストが大きすぎる。今後、株主らからモータースポーツの意義を改めて問 われるのは間違いない。
■厳しさ増す「そろばん勘定」
ホンダのF1撤退は、企業に競技スポーツからの撤退を促す可能性がある。金融危機に端を発する景気後退で、業績悪化に見舞われた企業が聖域なきリストラ に踏み込むことが想定されるためだ。1990年代のバブル崩壊後から2000年にかけて200超の企業が競技スポーツから撤退したと見られており、その再 来を予想する向きもある。
「経営が厳しくなれば、広告宣伝や企業スポーツが真っ先に切られる」。大手電機メーカー幹部はこう指摘する。
経営再建中の三洋電機は06年に、1988年から19年間続けてきたプロ野球オールスターゲームのスポンサーを降りた。三洋は07年3月期連結決算まで 3年連続の最終赤字に陥り、経費削減が最重要課題だった。「イメージ向上という当初の目的は達成した。厳しい経営環境を勘案した」と三洋関係者は話す。
ダイエーは05年にプロ野球球団を手放した。「(ピーク時で2兆5000億円に上った)有利子負債の圧縮に向けた抜本的なリストラの中の判断だ」(ダイエー広報)という。
一方、Vリーグにバレーボールチームを持つパイオニアは「経営は厳しいが、チームをサポートしていく基本方針に変更はない」(広報グループ)と強調。ト ヨタ自動車とともにF1チームのスポンサーになっているパナソニックも「スポンサー契約を中止する予定はない」(広報グループ)としている。
とはいえ、現在の景気悪化は全産業に波及しており、経費負担が重い競技スポーツはビジネスに直接関連しないことから活動の継続が厳しくなっている。ま た、最近は宣伝広告効果や社員の士気向上に必ずしもつながらないとの指摘があり、撤退に拍車をかける可能性もある。(田端素央、小熊敦郎)
<ホンダ>F1撤退 福井社長「9月までの状況なら撤退なかった」 二輪レースは「続ける」
12月6日4時59分配信 毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081206-00000000-maiall-moto
5日、F1撤退を発表したホンダの記者会見。350人の記者、100台近くのカメラが見守る中、福井威夫社長は、撤退を決めたのは4日としたうえで 「F1は企業にとってインパクトが大きい。毎年(存続の)緊張感があった。9月までの販売状況なら撤退はなかった。11月中旬のバルセロナ(スペイン)で のテストも手応えがあった。しかし11月に入り、自動車産業は加速度的に減速した。これが1年続いたらと思うと将来に明るい見通しが立たなかった。撤退は ビジネス上のこと」と悔しさをにじませた。
英国を拠点にしたチームは、すでに来シーズンに向けて車体などの開発やテストを続けているが、代表のロス・ブラウンさんを通じ、チームには「撤退」を宣 告した。08年度にドライバーを務めたジェンソン・バトン選手(英国)とは、すでに来季の契約を済ませていたが、関係者を通じて撤回を伝えた。
英国にいるドライバーやスタッフに対しては「バトンらには申し訳ないと思っている。英国のスタッフについてはチーム売却も含めて協議していく」という。 「栃木研究所」(栃木県芳賀町)にいる国内のスタッフには、F1で培ったノウハウを「新車開発に生かしてほしい。(F1を)を辞めた力で、どのくらい大き なものを生み出せるかが今後の評価につながる」と期待を寄せたが、3期目となった00年からのチャレンジが低迷したことについては「タイトル争いをする チームは限られている。勝てるよう最善を尽くしたが(我々は)タイトル争いをしていないので、どうすれば勝てるのか分からなかった」との本音も。
また、「何らかの形でモータースポーツへのチャレンジを続けることが必要」と話し、二輪の世界レース「モトGP」のワークス参戦と、アメリカホンダが核 となって展開する「インディカー・シリーズ」へのエンジン供給、国内外で行っている若手ドライバーやライダーの育成プログラムは継続することを発表。国内 レースについては検討していくという。
将来のF1復帰について、福井社長は「白紙だが、今でもやりたいというは気持ち強い」と言うにとどまった。【西村綾乃】
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