車が売れない理由として、日経ビジネス・オンラインに「若年層は、
生まれた時から大体家庭にクルマがあり、すでに日用品化している
クルマから得る感動が少ない」「携帯電話という新たな消費品目が
定着した」「自動車メーカーが魅力ある商品や使い方を提供しきれ
ていない」が例として取り上げられていたことを、2月2日の日記「
消費者の地位の不安定さが、車への興味を失わせる」に書きまし
た。最初の2つの理由は自動車メーカーには対応が出来ません
が、最後の「自動車メーカーが魅力ある商品や使い方を提供しき
れていない」について少し考えてみたいと思います。
下記ニュースによると、売れている車の殆どがいわゆるスモール
カーとミニバンです。2位に入っているカローラは、ワゴンやハッチ
バックタイプを含んでいて、セダンはわずかです。プリウスはセダン
というよりも、ハイブリッドであることが評価されています。そう考え
ると、現在日本で消費者が求める車は、1500ccクラス以下のスモ
ールカーか、ミニバンということになります。かつてはセダンが売れ
筋のランキングと上位を占め、またスポーツカーなど人気でした。
一時は4WDのオフロードタイプも流行ったことがありました。市場構
造は随分と変化しています。
では結局日本の自動車市場はスモールカーとミニバンしか基本的
に売れないのでしょうか。そのような傾向があるのは確かでしょう。
スポーツカー市場は壊滅状態、セダンの多くは年配の人か社用車用
しか売れません。
結局自動車会社各社は、大ききな市場であるミニバンと小型車に資
源を集中投資することになります。市場に投入され売られている車の
多くは、この分野の車になります。また一つの車体とエンジンを開発
すれば、デザインやコンセプトを変えつつもまったく違うように見える
車を安く投入することが出来ます。例えばトヨタはビッツを一度開発す
れば、その部品を使ってプラッツ、ファンカーゴ、Bbなどを簡単に安く
開発出来ます。その結果、この大きな市場は各社の投入した数多く
の車が入り乱れ、市場を取り合う混戦状態になっています。これは、
確実に多くの消費者が存在するマス・マーケットを手に入れることを
狙った戦略と言えます。
しかしこの戦略は一般公約数的な大多数の消費者のみを狙ったも
のであり、それ以外の消費者を置いてきぼりにしています。スモール
カーやミニバンが欲しい多くの消費者にとって、日本は数多くの選択
肢のある素晴らしい市場です。一方、例えば、わざわざ車に金をか
けたくはないが、もしもいいスポーツカーが発売されれば買いたいと
思っている一部の消費者は、車に大金をつぎ込む気持ちを無くしてし
まいます。
車雑誌のベストカーだったかカートップだったかで、何年か前にア
ンケートをとっていました。あなたが車を買うのならば、どんな車がい
いかというものでした。不思議なことに、これだけスポーツカーが売れ
ていないにも関わらず、読者は圧倒的にスポーツカーに興味を持って
いました。最もこれは車雑誌の読者という限定された人の意見であり、
また現実問題として買う車は別であるかもしれないということを考慮す
る必要はあります。しかし細かいデータは忘れてしまいましたが、それ
はかなりの割合であったように記憶しています。スポーツカーを欲しい
と思っている潜在的消費者は数多くいるのです。
1989年、マツダはロードスターを発売し、世界中で小型オープンカー
・プームを生み出し、新規需要を掘り起こしました。従来の自動車市
場に加えて、消費者の新規需要や買い替え需要を作ったものと思い
ます。では今は何故スポーツカーが売れないのか。私の仮説を述
べてみます。
スポーツカーがたくさん売れていた80年代末から90年代初頭にか
けて、日本はバブル経済でした。自動車もそれと平行して巨大化・高
級化してしまい、特にスポーツカーはその傾向が顕著でした。スープ
ラ(JA80)、フェアレディZ(Z32)、RX-7(FD3)、スカイライン(R33)
といった伝統あるブランドは、軒並み3ナンバーサイズ、300-400万
円以上の高級車となり、スポーツカーが欲しいと思う層が多い若者
に買えるような、手頃な価格の小型スポーツカーのラインナップが非
常に貧弱になってしまいました。まだ2000cc程度の比較的廉価な
プレリュード、シルビアといった車はありましたが、デザインなど総合
的に魅力がなくなっていました。実際、90年代のバブル経済崩壊後
に発売されたスポーツカーの中では、シルビアの最終型(S15)シル
ビア等の少数の例外を除き、現在デザインの評価があまり高いもの
がないのが現実です。ロードスター、MR2、MR-S、S2000といった二
人乗りの本格的なスポーツカーは、みんなと一緒に大勢で外出した
い一般的な若者には少々特殊な車であり、大きな人気を継続的に得
るには至りませんでした。車好きな私の個人的意見としても、この時
期は日本のスポーツカーの不毛な時期だったのではないかと思いま
す。
次々とスポーツカーを発表しても、大きな売上につながらない。自動
車会社は次第にスポーツカーに対する興味をなくしていきます。ニュ
ーモデルの投入は殆ど無くなり、モデルチェンジすらしなくなります。
経営危機になった日産は、伝統のスカイライン、フェアレディZの消滅
すら考えるようになります。また2002年の排ガス規制によって多くの
スポーツカーが生産中止になりました。この結果、消費者のスポーツ
カー人気はさらに低下することになります。人気が低下するから、自
動車会社もスポーツカーを投入しなくなり、それがさらに人気低下を
招きます。若者はスポーツカーを知らないまま年齢を重ね、歳をとっ
ても興味や憧れを持たなくなります。こうして日本のスポーツカー市
場に、負の連鎖が出来上がりました。今は日本のスポーツカー市場
は、昔のスポーツカーの栄光が忘れられない中高年向けの小さな市
場となっています。
私は、消費者の嗜好がミニバンやスモールカーへ移行しただけで
なく、自動車会社が魅力的な商品を魅力的な価格で出せなかったこ
とが原因としてあると思います。実はもう一つの「元祖」ミニバン大国
のアメリカでは、未だにスポーツ・クーペはイメージもよく台数もそれ
なりに売れています。販売台数を詳しく調べたわけではありません
が、数多くのスポーツタイプやクーペが、小さなエントリー・レベルの
ものから中型、大型まで各社よりラインナップされており、実際に町
でも数多く見かけます。実は日本の会社も、日本未発売のクーペや
スポーツモデルをアメリカに数多く投入しています。例えばトヨタは
カムリをベースにしたソラーラや小型のサイオンTXといったクーペを
北米では販売しています。それに対して、日本ではスポーツカーを
欲しい消費者を置き去りにしてしまった。スポーツカーだけでなく、ミ
ニバンとスモールカーというマス・マーケット用商品以外の選択肢は
非常に小さい。
結局、実用的な道具としての車以外を、自動車会社は日本の消費
者に提案しきれていないのです。マス・マーケットに力を入れすぎて、
その周辺に存在しているであろう潜在需要の開拓を出来ていない。
1600-2000ccクラスの、デザイン・性能の良い小型スポーツカー
や、或いは4人が楽に乗れる小型スポーティセダンを、若者向きに
比較的低価格で作ってみれば面白いのではないか。それにハイブ
リッドを付け加えても面白い。
ただ残念ながら、今のこの経済状況では各社は冒険を出来ないで
しょう。売れるかどうかわからないニッチ市場を狙った商品を投入す
るよりも、コストを抑えてモデルチェンジや新規投入も最低限に抑え、
消費が落ち込んでも会社が存続できることを最優先に考える、縮小
均衡を考慮した戦略をとってくるでしょう。暫くはニッチな市場が開発
されることもなく、マス・マーケット用の車が幅を効かせる時代が続く
ものと思います。
08年の除軽新車販売…ホンダ フィット 6年ぶりトップ
http://response.jp/issue/2009/0108/article118651_1.html
現在の売れ筋の車種は、日本自動車販売協会連合会が発表し
た2008年の乗用車車名別新車販売台数(軽除く)によると、トップは
ホンダの『フィット』で、前年比50.1%増の17万4910台だった。フィ
ットがトップとなったのは6年ぶり。2位のトヨタ『カローラ』は同2.1%
減の14万4051台と低迷し、フィットと約3万台もの差だった。トヨタは
トップは逃したものの、3位が『ヴィッツ』、4位が『クラウン』、5位が
『プリウス』、と2-5位を独占した。6位は日産『セレナ』、7位がトヨタ
『パッソ』で、8位がトヨタ『ヴォクシー』、9位が日産『ティーダ』、10
位がマツダ『デミオ』だった。
夏ごろまでガソリン価格が高騰した影響もあってスモールカーがベ
スト10に相次いでランクインしたほか、ハイブリッドカーのプリウス
も5位にランクインした。
1~12月
通称名 メーカー名 台数 対比
1 フィット ホンダ 174,910 150.1
2 カローラ トヨタ 144,051 97.9
3 ヴィッツ 〃 123,337 101.6
4 クラウン 〃 74,904 132.7
5 プリウス 〃 73,110 125.4
6 セレナ 日産 72,927 94.0
7 パッソ トヨタ 72,767 90.9
8 ヴォクシー 〃 70,165 95.5
9 ティーダ 日産 65,302 104.9
10 デミオ マツダ 64,990 99.2
11 ノート 日産 62,704 112.7
12 スイフト スズキ 58,950 111.4
13 エスティマ トヨタ 58,463 78.8
14 ノア 〃 57,477 94.1
15 ラクティス 〃 51,694 97.7
16 フリード ホンダ 50,646 (20-5)
17 キューブ 日産 47,295 91.2
18 マーチ 〃 46,686 102.2
19 アルファード トヨタ 45,119 86.4
20 ステップワゴン ホンダ 44,441 79.6
21 ストリーム 〃 41,399 72.2
22 ウィッシュ トヨタ 39,292 69.2
23 ヴェルファイア 〃 38,969 (20-4)
24 マークX 〃 38,748 82.1
25 シエンタ 〃 34,809 99.4
26 ポルテ 〃 32,961 89.6
27 bB 〃 32,413 84.4
28 プレミオ 〃 32,044 83.9
29 エクストレイル 日産 31,710 113.8
30 オデッセイ ホンダ 28,982 91.2
http://www.jada.or.jp/contents/data/ranking/1999.php
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