UAWの負の貢献
クライスラーに続いてやはりGMも破綻してしまいましたが、その破綻に大きな貢献をしたと評判なのがUAW - 全米自動車労働組合(United Auto Workers)です。自動車産業に昔から興味のあった私は、学部生だったころからUAWについて少々興味をもって調べてました。その記憶をたどりながらUAWのアメリカ自動車産業に果たした貢献について書いてみます。
かつてあるUAWの幹部が言ったそうです。組合にとって労働者の雇い主である自動車会社とは戦うべき敵であり、協調するなど考えもしなかったと。アメリカでは自動車会社は不況時に簡単に従業員のレイオフ(一時解雇)をします。仕事がないのに従業員を雇うのは、経費を無駄に払い会社の利益を減らすからです。そのようなレイオフをすることは会社に認められた権利であり、会社の利益のために従業員の生活や立場を考えている場合ではないからです。
当然のことながら従業員の立場は正社員と言えども不安定であるので、組合を組織して立場を強化します。組合はストライキをちらつかせながら或いは実行しながら、会社側から昇給や年金や医療費を出来るだけ取ろうとします。組合の代表は会社側からいくら有利な条件を組合員のためにもぎ取ってくるかによって評価されます。労使関係は常に敵対的であり、利益をいかに自分に有利に分配するかが焦点となります。
このような組合の姿勢は会社の利益を減少させることになり、それによって会社は将来の成長のための開発といった投資額を減らすだけでなく、生産コストを上昇させ商品の競争力を減らすことになります。組合の敵対的姿勢は、短期的には従業員の条件を良くする事になりましたが、長期的には会社の競争力を弱め、日本の自動車会社のような競合を相手にする力が削減されることになりました。
日本の自動車産業はまさにその反対です。日本では不況でも会社側は正社員の解雇はしない。不況時の従業員のコストは期間工を雇うことによって調整します。その代わりに労働組合側も会社側に対してあまり敵対的な行動をとったり無茶な要求をしない。それによって会社側は競争力を高めつつ将来の成長に向けての投資を行うことが出来、その競争力上昇や投資による会社の成長に伴い労働者も賃金や労働条件が良くなっていくことを期待出来る。
アメリカの敵対的労使関係は、会社側による労働者のマネジメントにも大きな負の影響を与えることになりました。組合側は会社側に有利な人事政策がされることを恐れ、会社側に労働者の昇進や配置転換を自由にさせることを認めませんでした。
それではどのように従業員は昇進していったのか。実は実力主義と言われるアメリカにおいて、完全年功昇給制度が採用されたのです。例えば製造ラインのリーダーが定年で引退したとき、その後を引き継ぐのは残った労働者の中から最も長く雇用されていたものがなります。その人が仕事が出来るかどうか、或いはその地位にふさわしい能力や資質があるかどうかは全く考慮されません。また不況時にレイオフされるのは、最も雇用期間が短かったものからリストアップされることになります。ここでも仕事が出来る人かどうかなどは関係ないのです。
従業員の昇進や解雇に仕事が出来るかどうかや能力が高いかということが関係ないとなると、当然の帰結として従業員の仕事ぶりに極めて大きな影響を与えます。何せどんなに真面目に働いたとしても、不真面目だけど自分よりも前に会社に入社したものよりも絶対に昇進することが出来ないことが決まっているのですから。これは従業員の動機付けや士気を削ぐ制度です。
UAWのいるアメリカの自動車工場では、遅刻するもの、酔っ払って仕事をするもの、工場内で喧嘩をするものが続出していたそうです。全て会議室で意思決定をして製造現場を訪問する必要性を感じることなどないスーツ姿の会社のエリートたちが、生産性向上のために導入した最新の製造ラインのロボットたちも、現場では正しく操作されたりメンテナンスされることがなく不良品を作り続けました。自分の製造した車に自分の名前を勝手に掘り込む者、フライドチキンを食べながら車の組み立てを行い食べ残しまで一緒に組み立ててしまう者、ホイールにタイヤを付けるときに他の部品をタイヤの中にいれたまま一緒に付けてしまう者。そのような事例が本やドキュメンタリー番組で紹介されていました。
このような行為の結果としてアメリカ車の品質は極めて悪く、新車時点で正常とは言えないものが続出したのです。アメリカ車は小型の燃費のいい車を作らなかったことが敗因と言われていますが、もう一つの敗因としてよく言われる品質の面ではこのようなことがあったのです。日本車との競争に勝てなかったのは当然です。
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