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2009年5月30日 (土)

117億円の巨大な国営マンガ喫茶について

 麻生首相が国立メディア芸術総合センター、いわゆるアニメ美術館建設費を計上したことについて、一部で批判が寄せられています。国費で漫画やアニメを保存したり閲覧させたりする施設についての批判です。そういえば大阪府の橋下知事も、府立の児童向け施設の国際児童文学館には漫画ばかりだと批判していました。漫画というものは良くないという世間一般の認識がまだまだ強いようです。文学を大量に保有する図書館が批判されることはまずないのに、漫画ということになると途端に批判されるという傾向が未だにあります。漫画は何故悪いのでしょうか。

 昔、私がまだ小学生とかの子供のころには、漫画は良くないものだとか、漫画しか読まないと馬鹿になると言われていました。当時の私は漫画よりも文章を読むことがずっと多かったのですが、そうかといって漫画が嫌いなわけではありませんでした。それに漫画がそれほど悪いものだと決め付けられるものでもないだろうと、当時から疑問も持っていました。それというのも、歴史や科学といった教育を目的とした漫画もあったし、漫画によって得られる知識や感性といったものもあるだろうと思ったからだし、実際私は漫画からそれらを得たと思っていたからです。知識や感性を得るための媒体が、何も文字ばかりの専門書や純文学で独占されなければならない理由はありません。
 漫画は絵を多用することによって、視覚から多くの情報を読者に瞬時に伝えられるという大きな強みがあります。いわゆる百聞は一見にしかず、というものです。例えば恐竜の一つであるブラキオサウルスを知らない人でも、漫画ならば容易にブラキオサウルスがどのようなものかを映像として理解させることができます。文字だけで特定の形や風景を描写することは簡単ではありませんし、それをいちいちやっていたら文章は非常に愚鈍なものになってしまいます。そうなると重要な部分や本筋がぼやけてしまうでしょう。
 また私は小さいころ、教師から漫画というものは読者に想像力を使用させることがないから良くないということを言われました。漫画は映像をそのまま提供させるために、読者の想像力を掻き立てないというのがその根拠です。しかしこれも間違いです。例えば漫画家は、人の服装や表情一つ一つを意図を持って気を使って描くそうです。その表情からその登場人物の心情を想像し、服装からその人の身分や生活環境を想像することができます。一方的に与えられた映像からは想像力が発達しないというのならば、ピカソやルノワールの絵を見たときでも人は想像力を発揮することは出来ないでしょう。

 もう一つ漫画が批判される理由としては、漫画は良くないという決め付けや先入観があると思います。それには一般的なこととして、かつての漫画というものの質があまり高くなかったというのはあったでしょう。漫画が本格的に定着しだしたのはここ数十年のことであり、一般的なものとしての歴史はまだ長くありません。そのような短い歴史の中で、残念ながら漫画の多くは子供向けのものであったり、ストーリーが稚拙であったりして、文学と比較して一般的に質が高いとは言い難かったというのはあると思います。しかし全てがそうであったとは思いません。例えば数十年前から火の鳥やブラックジャックといった手塚治虫の一部の漫画は極めて質が高かったし、その他にも質の高いものはありました。今や漫画は単なる子供向けのものを遥かに凌駕し、大人が読んでも十分楽しめたり勉強になるものが数多くあります。例えば政治、軍事、経済、法律、医療、社会問題、文化、歴史、生命、人をまじめに扱った漫画が数多く存在します。
 漫画を批判する人の中に、これらの漫画を読んで漫画の質の高さや実態を知っている人がどれだけ存在するでしょうか。一部の質の低い漫画だけを知って、それで漫画の全てを知っているかのように思い込んでいる人ばかりなのではないかと思います。少なくとも私個人の周りではそうでした。漫画を批判する人に、私が考える質の高いいくつかの特定の漫画を読んだことがあるのかと聞けば、読んでいないしどうせくだらないものに決まっていると言うのです。漫画というものの本質を見誤り、自分の思い込みによって漫画は良くないものだと決め付けているのです。
 昔、私は小説の歴史について調べたことがあります。欧州では小説というものは中世の活版印刷の普及と共に人気を得ていったそうです。しかし小説はあくまでも庶民のための娯楽に過ぎないもので、小説を読むことは決して褒められた行為ではなく、貴族や知識層などはそれを馬鹿にしていたということでした。実際、その当時の小説は文学として質の高いものが少なかったのではないかと想像できます。また中国においても、かつては小説は歴史書や思想に比較してくだらないものだとされていたようです。しかし今や小説を馬鹿にする知識層はあまりいません。相変わらずくだらない小説がある一方、質の高いものも数多くあることが広く理解されているからです。例えばノーベル文学賞の受賞は大変な名誉であるとされています。今の漫画という存在は、欧州で小説が普及し始めたときの状況に近いのではないかと思います。

 そんなわけで、私は日本の漫画文化を支持します。幸いなことに、この分野において日本は質・量共に圧倒的な競争力を持っています。この分野を国が支持するのは日本にとって非常に合理的なことです。かつてのアメリカが映画でアメリカの立場を強くしたように、日本も漫画やアニメを世界に先駆けて普及させることは極めて大きな意義があります。今回の国立メディア芸術総合センターがどのようなものなのか、果たしてそれだけの費用に見合うものであるかは私は検討していません。しかし漫画やアニメであるから国が支持するのに反対という考えかたには到底同意できません。積極的に支持し、この分野での競争力をさらに高めるべきです。

 

117億円の「巨大な国営マンガ喫茶」が誕生か

http://sankei.jp.msn.com/life/trend/090529/trd0905292254011-n1.htm

2009.5.29 22:49

このニュースのトピックス

 マンガやアニメ、ゲームを収集展示する拠点施設の「国立メディア芸術総合センター」。29日、補正予算が成立したこ とで、国立初の「アニメの殿堂」は実現に向かうが、「巨大な国営マンガ喫茶」と揶揄(やゆ)する声もあり、具体的な中身は見えない。日本のアニメやマンガ は「ジャパン・クール」と呼ばれ、世界的にも評価が高い。センターでは、こうした作品のセル画や生原稿などの資料を収集展示。実際にマンガを読んだり、ア ニメを見たりできるようにすることで、外国人観光客にもアピールする。

 文化庁は「新たなコンテンツ産業の発展につながる」と強調。構想では、4~5階建て(延べ床面積約1万平方メートル)で、東京・お台場が有力候補地。運営は民間に委託し、60万人の年間来場者を見込む。21年度の補正予算で事業費117億円を計上した。

  しかし、巨額を投じる割には、具体的な展示内容が見えてこない。これに民主党がかみついた。鳩山由紀夫代表は「巨大な国営マンガ喫茶」と評した。同党が開 いた勉強会でも「本当に計画通りに来場者数になるのか」「展示作品はどのように集めるのか」と批判が噴出。文化庁の担当者が答えに窮する場面も。

 勉強会で意見陳述した漫画家の石坂啓さんも「お上にほめられて喜ぶ漫画家はいない。ものすごくつまらない施設になる」と批判。「私の作品は展示してほしくない」と突き放した。

 文化庁は「予算成立後、できるだけ早く計画を進める」としている。

アニメ美術館は「国立の漫画喫茶」 民主・鳩山氏が批判

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090509/stt0905092001001-n1.htm

2009.5.9 20:00
このニュースのトピックス民主党

 民主党の鳩山由紀夫幹事長は9日夜、青森県南部町で講演し、平成21年度補正予算案に計上されたアニメ美術館建設費について、「アニメが好きなのは麻生太郎首相だ。首相が好きだから、官僚が作ってやろうと(いうことになった)。簡単に言えば国立の漫画喫茶だ。大変な浪費で、ばかばかしい」と厳しく批判した。

 政府の構想では、美術館にはアニメ、漫画、映画などの作品を展示。東京・お台場が候補地で、来場者数の目標は年間60万人。補正予算案には建設費117億円が計上されている。

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